【後編】大ブレイク前夜・絶賛発掘待ちのふんいきクリエイター ~モノ・ガタリEPISODE2~
~モノ・ガタリ~ それは、「モノ」を愛する者たちの語り。
町工場、其処は「モノがカタチになる」場所である。そんな場所に身置く多くの者たちは、「モノ」への偏愛が強い傾向にあることは、いわずもがな。 そんな、真っ直ぐな曲者たちの想いをお届けします。
前編では、彼の歴史を振り返り、若手設計者の才能がどのようにして芽吹くのか、そのヒントをチラ見せしてくれた鐘ヶ江さん。
イイ話っぽかった前編をふまえての、鐘ヶ江さんの〇〇がチラ見えする、後編スタートです。
しょーもな を追求する偏差痴高めのクリエイター!?
KB さて、前篇でカネチンのものづくりの原点みたいなものは少し垣間見えた気がするんだけど、何かその奥に潜むヤバめの自己顕示欲やナルシシズムがまだ見えてこないんだよなぁ。
・・・。
KB カネチン、高専で主席だったんだよね?
ま、まぁ。答えのある問題を解くのは得意なので。
KB う~ん。そんな秀才が、なぜ、こんな町工場(浜野製作所)にやってきたのか、謎が多いなぁ。でも、まずは高専に入ったきっかけを伺おうか。
高専に入ったのは、中学の製作部で尊敬していた2コ上の先輩3人が行った学校というのが大きいですね。どうやら高専のロボコン部にいるらしいと。
でも、ぼくが入ったときには、既に3人ともあまり姿が見えなかったですが(笑)
KB おっ。早速、闇が深そうな話やね。
ぼくが入ったのは、ちょうど高専ロボコンの過渡期というか。夜の作業は学校からの規制が入るようになって、上限が22時までになりました。働き方改革というのか、とくに、1年生は早く帰らそうみたいな流れがあって、ある意味、ロボコンゆとり世代ですかね。
それでも1年時は加工要員・社(部)畜柱として、とにかく先輩に認めてもらうために必死に働いてアピールしました。
結果として、1年生で何とかロボコン大会のチームメンバーに入ることができました。実力というよりは、単純に働き具合や夏休みの出席状況で決まった感じでしたけどね。
KB そのあたりは、ほんとに会社みたいだなぁ。ところで、高専5年間のロボコンで一番印象に残っているのはどの大会?
2年生のときに繰り上がりでチームリーダーになってしまったんですが、その大会のせいろを運ぶ出前ロボットが一番印象深いですかねぇ。
一応、ぼくのチームが全国大会までいったんですが。
実は、中国地区大会で1回戦負けしていて、審査員推薦枠で何とか全国に滑り込んだんです。
その時、評価されたのがメカニカルなスタビライザー(※)機構で、それを使っていたのが、ぼくのチームだけだったんです。
(※)スタビライザー〘名〙 (stabilizer)
① 船、飛行機、自動車の揺れを減少させ、姿勢を安定させる装置。減揺(げんよう)装置。〔万国新語大辞典(1935)〕
② 一般に、揺れなどを防ぎ機器の動作を安定させるための装置。安定装置。
出典:「精選版 日本国語大辞典」https://kotobank.jp/word/スタビライザー
KB スタビライザー、いまやカメラなどで当たり前のように使われているやつね。その当時(2014年)はまだ珍しかったのかねぇ。
ロボコン中国地区大会2014の空気感をお楽しみください。
(補足)この年のロボコンのテーマは「出前迅速」。ロボットが蒸籠を高く積み上げ、障害物を乗り越えて多くの蒸籠を運んだ方の勝ち、という競技であった。鐘ヶ江さんがリーダーを務めた呉高専チームはスタビライザー機構と装飾が評価され、中国地区大会でアイデア賞と全国大会推薦をゲットし、全国大会に向けて機構とデザインをバージョンアップしたものの、強豪校の鈴鹿高専と戦い惜しくも敗退した。
でも、全国大会に出たら、同じ機構を使っていて、さらに電気制御まで入っているような凄いロボットがたくさんありました。
ぼくのチームは1回戦敗退だったんですが、悔しさよりも刺激の方が強かったですね。
KB 確かに本当に凄いものに出会うと、比較云々よりは、尊敬や憧れの方が強くなるかもね。
このときに、ちょっとスイッチが入った気がします。あと、自分の設計を省みて、部品1個1個のサイズやカタチにも意味があることがようやく分かりました。
KB フィーリングだけでなく、理論・理屈も大事だということがここで腹落ちしたわけだね。つくづく教育というのは長い目でみないと、どこでどう影響するか分からんね。
その後、4年生まで高専ロボコンを続けたんですけど、結局ぼくのいたチームが全国に行ったのは2年生の時だけでしたね…。
KB しかし、まぁ中学から高専までずっとロボコンに青春を捧げてきて、それはそれで良かったんじゃないか。それでは、ようやく本題。高専主席のカネチンがわざわざ町工場・浜野製作所にやってきた理由を伺おう。
(・・・)
(・・・)
KB ん? どうした?。
(・・・)
KB カネ・・・チン?
フフフ…しっかり決まりましたね。ビタ着です。
KB ど、どういうこと?
今回のこのインタビューは、すべてぼくの「ふんいきクリエイター」としての作品の一部ですよ。
KB な、なんと! 突如、カオスというか、どーしょもーなく、くだらない、例えるなら、工場の朝礼で面白いことを言おうとして、皆がうつむき、静まり返った沈黙の数秒間のようなじんわり湿った空気感をつくりだすという、あの「ふんいきクリエイター」の作品の一部だというのか!?
そうです、ぼくが本当に創りたいのは、そのどーしょもーない、得も言われぬ「ふんいき」そのものなんです。
KB なるほど、ようやく、カネチンの意図が飲み込めてきたぞ。これまで自分のものづくり遍歴を語りつつ、実はその話はどうでもよくて、すべてはこの何とも言えないグダグダしたラストに向かってのふんいきづくりだったということか!
ようやく気付きましたね。ぼくからすれば、過去の自分なんて、未来への都合良い解釈でしかないですし。まぁ、それでも何か新しいふんいきを生み出したいっていう欲求だけはあるんですよ。結局、モテたいだけなんですかねぇ、知らんけど。
KB これまでのやりとりは何だったのか…。すごく悔しいけども、このどーしょもーない、やるせない、ふんいきに飲み込まれたのは間違いない。
フフフ…なぜぼくが町工場にやってきて、うき身をやつしているかのか、この続きはWebで。
<おわり>